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一人劇 狂気




あるところに、一人の医者がいた。
その医者はたいそう頭脳明晰であり、多くの人を助けた。
だが、彼は誰にも言えない感情を抱くようになった。

やわらかいそれを
愛しいというように
ぷつぷつとメスを入れていく

なんて素晴らしい、これが快楽なのか

彼は次第に、快楽という名の狂気に身を委ねるようになり。
彼は、狂っていった。

私の理想に近い体はないのだろうか
それを、そのやわらかい肌に傷をつけたい
傷からあふれる紅い紅い血で飾って
ああ、愛しい愛しい
快楽とは、なんて素晴らしい感情なのだろうか――

あるところに、一人の医者がいた。
その医者はたいそう頭脳明晰であり、多くの人を助けた
が、周りからは決して愛されることはなく。
絶望した医者は、その狂気で周りを愛そうと。
彼は自分の感情に溺れていくのだった。


 

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